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Issue 021  二山治雄
溶ける境界線

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     あなたとわたし

 

透明に象られた境界線になりきる事ができない水のようだ。

 

しかし 

確かで柔軟な水の通り道のように

静かに私たちの間に溶け出す、

 

線は語りだす

あらゆる方角から投げられる放射の光を

その個体、小さな個体の内側から

 

そして

もう一度、

その半径を回る。

その、半径を回る。

もう一度

その円を新しいコンパスを試すように。

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あなたがそこに現れた。 

 

どこまでも続く火のようなもの。

 

それは、すでに清々と灯された、

強く萌える小さな炎。

 

あなたがそこに現れた。

 

その炎はあなたの側にある炎を描き、

 

形のない火種は形を取ろうとして様々な線を描き始める。

遠くに、すぐそばに、横に見えるものをただの

空気の通り道として

 

暖かな空気が広がる。

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それは心地の良い大きな渦のようで、

その渦は廻り続ける。

 

よく見つめると

やがてゆっくりと溶けて、

 

暖かい陽だまりになってゆく。

 

それを知るところまで

二つの手は歩みを進め、

いつか

その陽だまりが確かにそこに

訪れるとわかっているからだ。

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‘Ton pot, mon pot. ’

Il ne peut s'agir d'une frontière transparente, Comme un chemin d'eau sûr et flexible.

 

Qui se dissolvent doucement entre nous.

 

Comme si une évidence à toi,
Le chemin au lequel n’est pas vois.
Meme si ca te permet transparent comme un verre.

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Que tu es apparu là.

 

Comme une ligne lumineuse qui dessine avec joie.

Encore une fois,
Comme une vue sans cadre de fenêtre.
Une nouvelle spirale de joie.

 

Encore une fois,
Faites le tour de ce rayon.

Faites le tour de ce rayon.

 

Les graines qui l'animent.
C’est une graine qui englobe tous les phénomènes.

 

Encore,
Autour du cercle,
comme pour essayer une nouvelle boussole.

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Que tu es apparu là.

 

C'est un feu qui se prolonge indéfiniment. C’était deja qu’il ait été allumé.

 

Il remplace mon désir de dessiner

et de façonner une flamme naissante à ses côtés.

L'étincelle informe commence à dessiner diverses lignes, Pour tenter de prendre forme.

 

Ce que nous voyons au loin, juste à côté de nous,

 

C’est comme un passage d'air. L'air chaud se répand.

 

C'est comme un grand bain à remous confortable. Le vortex continue de tourner.

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Tu vous regardes de près,
Il va lentement fondre en une chaude lueur.

 

Les deux mains continuent de marcher. Savoir qu'elle est là.
Parce qu'ils savent qu'un jour ce soleil sera là.

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2014年、17歳の時にローザンヌ国際バレエコンクールで優勝し、センセーションを呼んだダンサー、二山治雄。パリ・オペラ座バレエの契約団員として2020年まで活動した後に帰国し、現在は国内で精力的に活動を行っている。昨年は夏にガラ公演『BALLET TheNewClassic』に出演する予定だったものの公演は延期されたが、横浜バレエ・フェスティバル、『Shiver』、『Ballet at the Gathering2021』そして『Eclipse』など様々な舞台に立ち、進化した姿を日本の観客に見せた。

 

元バレエダンサーという経歴を持つファッションデザイナー幾左田千佳は、二山の磨き抜かれたアンドロギュヌスな美しさに魅せられた。今回、彼女のアイディアで彼女のデザインしたドレスをまとった二山とフォトセッションを行った。クリエイターとして彼に大きなインスピレーションを得た幾左田は、フランスのアーティストに二山に捧げる詩「あなたとわたし。」を依頼。ここで紹介する詩、そして今回の撮影は、幾左田から二山へのラブレターである。

 

人種もジェンダーも超越したダンスの申し子二山治雄、幾左田千佳の美神となった彼の表現の秘密に迫った。

 

『Eclipse』で異分野のアーティストのコラボレーションに挑戦

 

しなやかな肉体、重力など全く存在しないかのような、いつまでも降りてこないような跳躍、パリ・オペラ座仕込みの美しいつま先と精緻なテクニック。25歳となったいま、二山治雄は今までのイメージを打ち破り、優美な香りをまとったボーダーレスなアーティストへと進化している。昨年10月には、YouTubeチャンネル登録者が180万人で世界的に注目される気鋭の若手ギタリストichikaと『Eclipse』と題した公演でコラボレーションを行い、コンテンポラリーの新作に挑戦した。若き天才同士が火花を散らしたパフォーマンスは、鮮烈なロックに合わせた二山の即興ダンスもあり、スリリングだった。二山はクラシック・バレエのアカデミックさを大切にしながらも、新しい扉を開きつつある。

 

二山 「ichikaさんの音楽は聴いていてとても魅力を感じ、同年代の特別なアーティストだと思いました。本番3日前にようやく一緒にリハーサルできて、それまではリモートでクリエーションを行いました。会うまで実際のところがわからなくて、ほぼ賭けのようなものでした。僕もどういう風に皆さんに受け止めてもらえるのか、という不安がありました。ですが新しい挑戦で、最終的には楽しく踊ることができました。渋谷ストリームホールの舞台が狭かったのは踊っていて大変でしたが、客席とも近いので、飛び出したり、はみ出したりした方がいいかな、と踊りました。ダンスを観に来ている方と、音楽を聴きに来ている方、違う分野を見るお客さんが来ていたので、お互い、新しい分野を知ってもらえてよかったと思います。」

 

二山 「『Eclipse』の振付はアメリカのジョフリー・バレエ団で活躍する新井誉久さんに創っていただきました。アメリカとの時差があり、日本時間では夜の12時過ぎにリハーサルをしていました。新作をリモートで創るというのがやってみると意外とつらくて、本当に本番、合わせてみないとわからない中やっていました。」

 

『BALLET TheNewClassic』で新しい扉を開く

 

そんなクリエーション活動の最中に、今回の撮影は行われた。

 

二山 「『Eclipse』公演のために上京する一日前に今回の撮影をしたのですが、舞台のストレスから解き放たれて、撮影では発散できたと思いました。プレッシャーがある中で、この撮影で気を紛らわすことができたのです。『BALLET TheNewClassic』の時に知り合った方々です。僕は今までタイツを履いて、シューズを履いて撮影をしたことしかなかったので、最初はどうすればいいんだろう、どうやって撮影されればいいのだろうと思いました。いつもは限られたポーズの中で撮影されていたので、最初は緊張していました。」

 

『BALLET TheNewClassic』公演が延期になった後、リハーサルのために7月に都内で出演者が集まり、男性も女性も関係なく、公演の衣装デザインを担当した幾左田千佳のドレスを着て動いた様子が撮影された。二山は最初戸惑っていたが、初めての経験を楽しみ、ドラマティックなドレスの世界観を自分なりにそのしなやかさと優美さで表現した。

 

二山 「僕はなかなか自分で殻から抜け出せないタイプです。今回皆さんに会えて、自分でも気が付かない新しい面を見ることができました。最初はどうやってやればいいのだろう、恥ずかしいという気持ちもありましたが、楽しい雰囲気の中でできたと思いました。モデルだけではなくて、カメラマン、スタイリスト、いろんな人が合わさってみんなで作り上げるという感じがありました。」

 

二山 「今までは自分の写真を見るのは好きではなかった。幾左田さんの衣装で井上ユミコさんに撮ってもらって、自分ってこういうふうになるんだ、と。初めて見たような気持ちです。『BALLET TheNewClassic』のリハーサルのときにほかの出演ダンサーたちが撮影されているのを見て、みんな写真慣れているな、と思ってすごく焦っちゃって。。どうしようと思ったのですが、千佳さんも撮影チームもそういうのも全部受け止めて撮影してくれたので、今回は安心して、気楽に楽しくできました。」

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ストイックな「普通の人」が美の化身となるまで

 

 

その並外れた身体能力と、一度観たら決して忘れることができない美しい踊り、柔軟で無駄の一切ない肉体は、二山のたゆまぬ努力とストイックな生活から生まれた。二山は地に足のついた謙虚な人柄の持ち主だが、ひたむきに研鑽を重ねてきているのが伝わってくる。

 

二山 「僕はいたって普通の人です。特別な努力はしていません。ただ、普通だからこそ、他の人より何かやらなければならないなという気持ちはあります。今は松本の実家暮らしです。地元の教室で練習をしているので、助教師もしています。練習は大体12時から夜の9時くらいまで。休日は10時から夜の9時くらいまで稽古をしています。」

 

二山 「もともと僕は太りやすい体質で食べたらその分太ってしまい、アメリカにいた時にはドカ食いをして、今より10数㎏体重が多くなってしまいました。日本に帰国後、公演があったこともありますが1か月で5㎏痩せて、そのほうが踊りやすいのを実感しました。暇な時間があると食べてしまうので、バレエをしてなるべく食べる時間がないようにしていたのです。自分の身体を見せて人に感動を与えるということは、やはり無理をしないとできないことだと思っています。」

 

二山 「海外に行って、体格的なことや見た目の面では欧米の人は恵まれていると実感しました。僕の恩師は、日本人のいいところは頑張れることとおっしゃっていました。実際海外に行ってそれは実感しました。恵まれていないからこそ、執着心を持って頑張れたと思います。僕は海外に行って身長が低かったり体格が恵まれていなかったり、というコンプレックスがありましたが、だからこそ頑張るという気持ちができました。生まれつき体格に恵まれていたらそこまで頑張らなかったと思います。頑張れるということに誇りを持ち、日本人で良かったなと思いました。」

 

二山 「努力でなるものとならないものがあります。持って生まれたものがあるのは海外のダンサーで、持っていないところから始めるのが日本人のダンサーですね。僕の身体も無理して作り上げたものです。無理して作ってきたからこそ、努力しても叶わないものがあるということもわかってしまいます。それがとてもつらく感じたことがあります。海外留学に行ってみて、普通の一般人ですら骨格から違うと感じました。突き詰めれば突き詰めるほど向上はしますが、つらいですね。踊っている分には楽しいですが。極めるということはどの分野にしても関係なく、どんな職業でもつらくて大変なものだと思います。」

 

二山 「僕は自分の身体で酔えるところはないので、必死で鍛えています。生まれつき身体は柔らかかったのですが、そこだけにこだわらずに、でも持ち味として生かしたいと思っています。以前は自分の長所は?と聞かれて柔軟性くらいしか思いつかなくて。でも脚が高く上がる人は海外に行けばいくらでもいるし、あえてそこだけを強調したくないと思っています。」

 

表現者としての成長は普通の生活から

 

日本人のダンサーは技術に優れている反面、表現が苦手と言われている。だが二山はここ数年で匂い立つような香りと高い精神性を感じさせる踊りを表現できるまで進化した。

 

二山 「表現するのが僕は苦手で、クラシック・バレエを踊っていると淡々と踊ると言われていました。いつも「自分を見せろ」と言われます。今でもそれが課題ですが、バレエだけやっていてもだめで、いろんな苦労をして、いろんな楽しみなどを感じないとやっぱり表現というのはできないのだと少し年を取って感じました。10代の高校時代はバレエ漬けの日々でした。部活や友達と遊ぶことをしていなくて、学校以外の時間はほぼバレエに費やしていました。今になって感じることは、バレエ界では中学の途中や卒業と同時に海外に留学する人が山ほどいますが、僕は学生時代の思い出、家族と過ごす時間など、バレエ以外の経験も大事だと実感します。もちろん練習は大切ですが、表現力をつけるにはバレエだけではなく、いろんな経験をしないと表現者として育たないなと思いました。日本から海外に出て違う空気を味わったのは大きかったです。そして今回日本に帰ってきて、バレエ以外の仕事、アルバイトなど社会勉強もしてみたのですが、そのような経験も大事だと感じました。今は出身の教室でアシスタントとして教えもしていますが、それも僕にとってとても身になっています。皆さんもバレエだけでなく、いろんなものを見て触れて視野を広めてほしいと思います。」

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パリ・オペラ座での孤独な闘いと、恩師との絆

 

二山は2017年から2020年まで、オーディションを受験してバレエの殿堂パリ・オペラ座バレエの契約団員として舞台に立っていた。2019年の外部入団試験では1位になって実力を認められている。『シンデレラ』などのグランド・バレエから話題の振付家クリスタル・パイトの傑作『シーンズンズ・カノン』まで様々な舞台に立ったが、それは孤独な闘いであった。

 

二山 「パリは今から思えばとてもいい思い出だったのですが、実際にいた時にはとてもつらく、一人で泣いているときもありました。人種差別もありましたし、一人で自分の国を離れて、海外で暮らすのは大変です。僕としては日本で踊りたいという気持ちがあるのですが、やはりバレエは文化的には西洋のものなので、パリでは修行だったと思っています。パリ・オペラ座では正団員ではなく自分の居所がないというのがつらくて、周りを見ながら動いている自分がとても嫌で。本場にいて空気を味わえて、とても勉強にはなったのですが、いつも気持ちが張っている感じで常に緊張していました。」

 

二山 「パリに行って、そこで住んでいたことは大きな刺激でした。大好きなマチアス・エイマンと同じバレエ団で踊ることができました。僕は自分からオペラ座の外部入団試験に挑戦したいと言ったのではなくて、恩師が書類を出したらたまたま受かったのです。いろいろな出会いがあり、オペラ座の先生に学んだのもとても勉強になりましたが、日本に帰ってきたときに、自分の先生は松本の先生だと実感しました。何歳になっても土台を作ってくれた先生というのは一番です。そこに色を付けてくれるのが外部の先生で、オペラ座の先生が僕の基礎に色を付けてもらえたのは良かったと思います。今の恩師は青春時代を見てくれた先生でパーソナリティも理解して、癖も全部わかっています。どんなにキャリアを積んでも、いくつになっても注意をしてくれるので、とても感謝しています。日本人のダンサーは日本人の先生にしかわからないと思っています。日本人はバレエ向きの身体のスタートラインには立てなくて、マイナスの状態であるため、海外の先生にはわからないところがあります。」

 

 

「無」の気持ちで踊る

 

一度観たら忘れられないような美の世界を体現しているときに、二山は何を考えているのだろうか。

 

二山 「本番、踊っているときの気持ちは無です。直前まで筋トレなどをして体を動かしていないとだめで。僕はほかのダンサーの良い演技を見ると自分も良い演技ができるのかな、と緊張してしまうので閉じこもるタイプです。本番も緊張したまま踊るから、ほぼ無、です。何も考えないでその時の身体に任せて踊っています。」

 

筆者は、2014年にニューヨークでの世界最大のバレエコンクール、ユースアメリカグランプリ(YAGP)で二山が金賞を受賞したパフォーマンスを観て以来、彼の様々な舞台に接してきたが、なかでも『薔薇の精』で見せたこの世のものではない美しさ、香気と浮遊感には強く惹きつけられた。夢に出てきそうな妖しさだった。その瞬間だけで消えてしまう儚い芸術であるバレエの本質を感じさせてくれる。

 

二山 「僕は人間の役より、人ではない役、妖精のほうが踊っていて楽なのです。『ドン・キホーテ』のバジルのような、役が決まっているものに自分をあてはめるのが得意ではなくて、薔薇の精など、実在しないものの方が合っていると感じます」

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クリエイターにインスピレーションを与えるミューズとしての二山治雄

 

二山自身は自覚していないが、彼の持つロマンティックな香りを放つ繊細な踊りは、幾左田始め多くのアーティスト、クリエイターに霊感を感じさせるものである。今回の記事に当たり、フランスのアーティストが彼に捧げる詩を書き下した。

 

幾左田千佳(以下 幾左田) 「撮影では、二山さんはとても繊細な感情を表現してくれました。舞台で観る二山さんは、そのストーリーに応じた妖精だったり王子だったりしますが、この撮影では二山治雄という人を表に出してくれていたと思います。いろいろな感情を持った人だと感じました。二山さんを演じる上でどのような表現の作り方をしたのか聞いてみたいと思いました。今回は女性らしい素材だったり、ドレスのテイストだったり合わせたものが多様性、ダイバーシティを象徴させるファッションストーリーだったと感じました。ファッションを通してどのようなインスピレーションがあったのでしょうか。」

 

二山 「衣装を千佳さんに選んでもらって、着てみて、僕はあの時自分が思うようなポーズだったり動いていたりして、職業的にダンスなのでポージングをしてみて。こういう感じのほうがきれいに見えると思いながらも、あまり考えずに自分のその時の感じで自由にやっていました。」

 

幾左田 「撮影の仕上がりを見て、シンフォニーというタイトルがぴったりだと思いました。二山さんというずば抜けた才能を持ったダンサーと、フォトグラファー、デザイナー、スタイリストのみんなが合わさった感じが素敵に出ていたのです。本当に美しいものって世の中の理不尽なことに打ち勝つパワーがあると思っていて、コロナ禍が続いていてまだまだ先が見えない世の中で、この写真って、バレエを知らない人が見てもなぜ美しいのかを考えたくなるような写真だと思いました。個人的には一人でも多くの人に、メッセージとして見てもらいたいと思っています。」

 

幾左田 「二山さんの魅力は、男女問わず圧倒的な美の強さがあって、ひたむきさ、毎日頑張っている様子が現れていることです。ひたむきな強さが美をすくい上げていると感じています。こういうダンサーってプロでも少ないと思っています。それに身体能力が合わさっているのでとんでもない化け物だと感じています。稽古の量や一日の過ごし方を聞いても人の何倍も努力していると思います。そしてダイバーシティの時代にぴったりのダンサーだと思います。男性ですが、女性服をまとっても美しくて、アジア人というコンプレックスを持っていますが、人種を取っ払うような、超越した存在です。いろんなファッションを通して表現する二山さんをもっと見てみたいです。

 

今回、フランスのアーティストにお願いして詩を書いていただきました。その方は二山さんに会ったことはなくて、写真からインスピレーションを得て書いてくれました。恋に落ちているような詩です。まだ実際に観ていないアーティストの写真を見ただけで、ラブレターのような詩を書けるなんて。その美意識を刺激するものがあったのですね。」

 

無欲だが、自らを磨き、進化し続ける

 

バレエの神様に愛されたような、唯一無二の個性と磨き抜かれた技術、記憶に残る踊りを見せる二山治雄は、いつまでも降りてこないような跳躍に色香をまとい、ニジンスキーの再来と呼ばれる。終わりが見えないコロナ禍の中で、彼自身もどこへ向かっているのか見えないが、ひたむきに自らを磨き続けており、新しいことに挑戦し進化し続けている。それはバレエへの愛にほかならない。そして意外な一面を持っていることもまた魅力的だ。

 

二山 「僕、本当に欲がなくて。学生の時にこのバレエ団に入りたいから頑張るとか、夢が普通はありますが僕にはなくて。バレエはつらいのですが、それでも続けているというのはやはり好きだということなのだと思います。バレエをやっているといろんな人たちに出会えるので、それはとても楽しいです。」

 

二山 「僕は全然そんな気がないのですが、皆さんの思っている僕のイメージが、とても真面目で、クラシックしかやっていないというイメージがあるらしくて、実はお酒を飲むとかそういう話をすると皆さん、とてもびっくりされます。ローザンヌで優勝した時のイメージのまま今まできて、今回の撮影など違うことをやっていることに対してみんな驚いているのだと思います。これからもいろいろな踊りに挑戦したい、今は選ばずに何でもやってみたい。「こういうこともいいんじゃないか」と視野を広げたいと思います。僕には年の離れた3人の姉がおり家に3人チーママがいるみたいだったので、目上の人たちと話すのも苦になりません。千佳さん、そして『BALLET TheNewClassic』チームとの出会いで内面を引き出してもらったところです。」

 

二山 「自分もどうなってしまうのか不安もありますが、クラシック以外を踊ってみて、改めてクラシックとは違う感情をクラシック作品にもこめられるようになりました。一回離れてみて、第三者として見ることが大事だと思いました。自分の知らないところや全く関係のなかったところに足を踏み入れるというのも、今までなかったので、機会を与えてもらったのもありがたく思います。環境と機会に恵まれていますね。3月の日本バレエ協会の『エスメラルダ』公演では、今まで踊っていなかった野性的なアクティオン役に挑戦します。」

 

今年の夏には、昨年より延期された『BALLET TheNewClassic』公演も予定されており、ここでも新作のコンテンポラリー作品を踊る予定だ。二山治雄の挑戦と進化からは目が離せない。幾左田千佳にとっては「ファム・ファタル」ならぬ「オム・ファタル(運命の男)」となったミューズ、二山と幾左田のさらなるコラボレーションも今後様々なメディアで展開することだろう。

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Ballet dancer : Haruo Niyama

Photographer : Yumiko Inoue

Stylist : Tomoko Kojima

Lyric writer : Nanako Oka

Designer: Chika Kisada (TulleDress,Socks,Crinoline,Pants)

​Interview: Naomi Mori

二山治雄/Haruo Niyama

その柔軟な肉体でどこまでも高く舞い上がる跳躍と超絶技巧、パリ・オペラ座仕込みのエレガンスを身に着けた若きバレエダンサー。
長野県松本市生まれ。白鳥バレエ学園にて塚田たまゑ・みほりに師事
2014 年第42 回ローザンヌ国際バレエコンクール第1位、YAGP(ユース・アメリカ・グランプリ) NY決戦シニア男性部門第 1 位となり17歳にして世界中から注目を集める。
ローザンヌ国際バレエコンクールのスカラシップでサンフランシスコ・バレエスクール トレイニー・プログラムに留学。
2016年ワシントンバレエ団スタジオカンパニーに入団。2017〜2020パリ・オペラ座バレエ団契約団員として入団し、ルドルフ・ヌレエフ振付作品、クリスタル・パイト振付作品など古典から現代作品まで多くの舞台に立つ。アブダビ、シンガポール、上海ツアーにも参加。2019年パリ・オペラ座バレエ団外部オーディション1位。

2014年読売巨人軍創立80周年記念開幕式で踊る。サイトウ・キネン・フェスティバルにて小澤征爾氏の指揮で踊る。2016年NBAバレエ団"Stars and Stripes "にゲスト出演。2018年・2019年キエフ・バレエ団日本公演にゲスト出演。他国内で多数の公演に出演している。

<公演情報>

2022都民芸術フェスティバル参加公演「ラ・エスメラルダ」全幕
2022年3月6日(日) 13:00-

オフィシャルサイト

2022都民芸術フェスティバル 公式サイト


『BALLET TheNewClassic 2022』

2022年8月5日(金)8月6日(土)8月7日(日)

  [会場] 恵比寿 ザ・ガーデンホール

[出演]中村祥子 / 海老原由佳(ポーランド国立バレエ団 プリンシパル) / 森田愛海(エストニア国立バレエ団 プリンシパル) / 水谷実喜(バーミンガムロイヤルバレエ団 ファーストソリスト)/ 菅野茉里奈(ベルリン国立バレエ団 デミソリスト)/ 二山治雄 and more 

[舞踊監修]堀内將平(K-BALLET COMPANY プリンシパル)
 

Official Site

https://www.balletthenewclassic.com

Official Instagram

https://www.instagram.com/balletthenewclassic/?hl=ja

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